| 要旨トップ | ESJ64 企画集会 一覧 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


企画集会 T05  3月16日 9:00-11:00 H会場

気候変動の緩和・適応策:生態系影響予測から人間活動との関係まで

岡田慶一(横浜国大・環境情報),大橋春香(森林総研),高野(竹中)宏平(森林総研),米倉佑亮(横浜国大・環境情報)

 2015年のCOP21におけるパリ協定では、長期目標としての2℃目標や1.5℃目標の追求、気候変動に対する適応の長期目標設定および実施など、京都議定書以来の世界的な気候変動対策が採択された。気候変動に対するより現実的な緩和・適応策の立案とその実行が各国に求められる中で、我々生態学者の果たすべき役割とその重要性は増しており、将来の気候変動が生態系やそれに関連・依存する社会にもたらす影響をより具体的に明示していかなければならない。
 まず、生物分布や絶滅予測など、気候変動による生態系への影響を明らかにし、それに対する適応策を提示していくことが必要である。近年、生物や気候など、あらゆるグローバルデータの拡充により、これまで困難だった大陸や全球スケールでの生物分布や生態系機能の動態に関して次々と新しい予測結果が報告されている。一方で、実際の生物や生態系のプロセスが予測モデルに十分組み込まれているとは言い難く、予測の確実性を高めるための課題は多く残されている。
 また、IPCCの報告書等で気候変動の社会への影響評価や適応策立案の重要性が指摘されているものの、生態系に関する考慮は少ない。生態系への影響を適応策に組み込むためには生態系と人間社会との関連性を明示することが求められる。例えば、各生態系サービスの経済評価手法の確立や、気候変動下におけるサービスの将来予測が不可欠である。さらに、農業など一次産業を基盤とする地域では、気候変動に伴う生態系サービスの変化は人間活動に直結するため、持続可能な人間活動を維持するための生態系管理策を速やかに計画・実行しなければならない。
 本集会では、これら課題に関する最新の研究成果の話題提供を通して、気候変動が生態系および社会へ与える影響の評価、および緩和・適応策を計画・実行する上での課題や方向性を議論したい。

コメンテーター:仲岡雅裕(北大),天野達也(ケンブリッジ大)

[T05-1] 趣旨説明:生態系の緩和・適応策に関する昨今の動向 岡田慶一(横浜国大・環境情報)

[T05-2] 気候変動が全球スケールでの生物の絶滅リスクに及ぼす影響:緩和策の効果と副作用の評価 大橋春香(森林総研)

[T05-3] 気候変動を考慮した保護区と生物の移動経路(コリドー)候補地の抽出にむけて 高野(竹中)宏平(森林総研)

[T05-4] 自然資本分布の将来予測とマリンレジャー利用の変遷:サンゴ礁を例に 山北剛久(JAMSTEC)

[T05-5] 社会-生態システムの脆弱性に着目した気候変動影響評価:モンゴル放牧草原を例に 柿沼薫(東工大,コロンビア大)


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