| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
企画集会 T05-3 (Lecture in Workshop)
現在多くの気候変動影響評価が行われているが、これらの成果をどのようにして適応策に繋げていくかが課題となっている。例えば本研究集会で大橋らは約9,800種もの種分布モデリングを行い、異なる気候シナリオと土地利用シナリオ、さらに生物の移動能力を考慮して絶滅リスクを推定することによって影響と適応策を評価した。
しかし1万種もの解析を行う計算負荷は非常に高く、より一般的な指標を用いる事ができれば、地域の生態系全体としての保全を検討したり、脆弱性を比較したりすることがしやすくなる。
今回我々は、Velocity of Climate Change (以下、VoCC; Hamann et al. 2015, Global Change Biology 21:997-1004を参照)を指標として解析を行った。VoCCとは、気候が空間的に変化(例えば年平均気温15-16℃の温度帯が100 km北上)した際にその距離を、変化に掛かった時間で割ったもの(例えば100km/100年=1km/年)であり、一定の気候条件を維持するために生物が移動していかなければならないスピードと考えることができる。
日本の年平均気温を1℃刻みの温度帯に区切り、これらの温度帯がIPCC (2013)の温室効果ガスの代表的濃度経路シナリオ(RCP8.5)で移動した場合、VoCCは 21世紀末までの平均で10^1.1~10^3.5 m/年にのぼると試算された。このVoCCと植生/土地利用タイプ、自然保護区などを重ねることで、気候変動影響に対する脆弱性やレフュージアの特定を進めており、本発表では、長野県を事例としたVoCCの解析結果を紹介する。