| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


企画集会 T07-1  (Lecture in Workshop)

博物館の標本利用とMuseomics

*細矢剛, 長太伸章(国立科学博物館)

生物多様性に関する情報は、その種の存在を示すデータ(オカレンス)から、個体の遺伝的特性に関する情報、集団におけるそれらや環境と関連した量的データなど幅広い。これらの情報は、標本・観察・文献などによってサポートされているが、観察・文献などが、事象から抽出された情報であるのに対し、標本は生物の存在そのものであり、もっとも強力で潜在的に多くの情報をもった実体ということができる。博物館はそれらの標本を保管し、生態学を含む生物多様性分野の研究に提供する機関ということができる。標本は、主にオカレンスをサポートする物的証拠として考えられてきた。しかし、標本には抽出のしかたによっては、それ以上のデータが内包されている。そこで、博物館等に収められている標本のメタデータと、標本由来のオミックスデータの融合的に解析し、生命現象を支えている様々なモノ(集団・個体・分子)に由来するさまざまな遺伝子の情報(オミックスデータ)と、環境・集団・個体に関する遺伝子以外の情報(生物多様性情報)を包括的に扱い、生命現象を理解しようという新しいアプローチが興ってきた。これがMuseomicsである。しかしながら、その実現のためには、大量の標本のメタデータ抽出・デジタル化、古い標本からのDNA情報の抽出、解析などの作業が必要となり、場合によって、これらが大きな障害を伴っている。そこで、本講演では、これらの障害やその解決法、標本の利用がもたらす可能性などについて、議論する。


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