| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
企画集会 T09-3 (Lecture in Workshop)
白山におけるクロユリ(Fritillaria camtschatcensis)の生育地の地表面に温度センサーを設置し、雪どけ時期を推定した。水屋尻調査地(標高2,450m)の1994~2016年のデータをみると、近年、雪どけが急激に早まっているということはなかった。ただし、水屋尻調査地の雪どけの時期は、多くの年では6月下旬~7月上旬であったが、1998年は雪どけが異常に早く、5月17日に雪どけを迎えていた。また、2016年も例年よりも雪どけが早く、6月13日に雪どけを迎えていた。複数個所での雪どけ時期を比較してみると、その時期はほぼ同調的であった。一方、クロユリの開花時期については、展望歩道調査地(標高2,440m)で現地調査を行うとともに、自動撮影カメラを用い、特定した。1994~2016年のデータをみると、展望歩道調査地のクロユリの開花時期は7月下旬から8月上旬で、近年、クロユリの開花が急激に早まっているということもなかった。ただし、水屋尻調査地で雪どけが約1か月早かった1998年は、展望歩道調査地では雪どけ日は不明であるが、クロユリの開花は6月29日で、例年に比べ約1か月早かった。また、2016年は、展望歩道調査地の雪どけは6月18日、クロユリの開花は7月16日で、例年に比べ約半月早かった。これまでのところ白山では雪どけ時期やクロユリの開花時期について大きな変化は見られないが、1998年や2016年のように雪どけ時期やクロユリの開花時期が早い年も見られるようになった。今後、地球温暖化の進行により、高山帯の積雪環境や高山植物の開花フェノロジーがどのように変化していくかは不明なことも多く、今後も継続して調査を行っていくことが必要である。