| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
企画集会 T12-1 (Lecture in Workshop)
地質学上北海道の脊稜部には、神居古潭帯は蛇紋岩、日高帯はカンラン岩を主体とした超塩基性岩が広範囲に分布する。
特殊な化学組成からなる超塩基性岩土壌は、植物の分布や種分化に大きな影響を及ぼす。
生理的特性から蛇紋岩地やカンラン岩地に生育地の本拠をもつ植物は、蛇紋岩植物と総称される。超塩基性岩植物ともいわれる。
1.蛇紋岩植物、固有植物
北海道に分布する蛇紋岩植物は15科56分類群で、日本産の21科78分類群の7割を占める。 56分類群の蛇紋岩植物のうち、13科53分類群が北海道の固有植物であり、その13科36分類群は狭い地域の固有植物となっている。
・北部地域 : 蛇紋岩植物7科14分類群分布。そのうち3科4分類群が固有植物である。
・中部地域 : 蛇紋岩植物6科18分類群分布。そのうち4科8分類群が固有植物である。
・南部地域 : 蛇紋岩植物5科7分類群分布。
・夕張岳地域 : 蛇紋岩植物10科19分類群分布。そのうち6科9分類群が固有植物である。
・戸蔦別岳地域 : 蛇紋岩植物8科11分類群分布。
・アポイ岳地域 : 蛇紋岩植物11科21分類群分布。そのうち11科15分類群が固有植物である。
2.高山植物の分布
北海道の低山域の蛇紋岩地帯には数多くの高山性植物が分布する。寒冷期の土壌の花粉化石等から、該当低山域は当時ツンドラ植生であったことが明らかになっている。この高山性植物は、その後の気候変動により蛇紋岩地に遺存した植物の一群であると考えられる。
3.ニッケル集積植物
ある種の植物は、土壌中から通常は必須でない特定の元素を多量に集積する。体中ニッケル含有率が1,000 ppm 以上の植物は、超ニッケル集積植物と称される。現在のところ日本産の超ニッケル集積植物は、夕張岳の蛇紋岩地に生育する一般植物のタカネグンバイだけである。