| 要旨トップ | ESJ64 企画集会 一覧 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
企画集会 T12 3月18日 9:30-11:30 F会場
超塩基性土壌を有する蛇紋岩地帯では,その特殊環境にしか見られない固有植物が集中する.その中には,一般土壌での種間競争に敗れ遺存的に蛇紋岩地に分布するものもあるが,新規に環境適応を果たし蛇紋岩地帯で種分化したと考えられるものも多い.蛇紋岩植物に共通する重金属耐性や矮性化などは,実際に自然選択が種分化に影響したことを示している.蛇紋岩地帯では多くの環境要因が選択圧として働きうるため,蛇紋岩植物が新規に獲得した適応形質を特定するには,母種集団と環境応答を比較することが重要となる.古くから行われている比較栽培実験は現在でも有効な手段であり,最近ではゲノム解析や発現解析からアプローチして適応を探る試みもなされている.
また,蛇紋岩地帯は小面積パッチとして分布する場合が多く,蛇紋岩植物にとってはハビタットが島のように隔離されている.一般土壌で蛇紋岩植物が生き抜くことは難しいと考えられるが,遠く離れた蛇紋岩地帯に共通して分布する分類群も知られる.こうした隔離分布がどのように形成されたのかは生物地理観点から興味深い.近年,次世代シークエンサーを用いて大量の分子データを利用できるようになったことで,ハビタット間の分散や分布の歴史的変遷,さらには類似した形態をもつ蛇紋岩エコタイプが共通の選択圧のもとで収斂進化した可能性まで示されるようになってきた.
本集会では,日本列島における蛇紋岩植物の分布と適応を概観したうえで,生態的適応と集団動態を包括的に解析した研究事例を紹介することで,蛇紋岩地における植物多様化に関する議論を活発化することを目指している.
[T12-1] 北海道・蛇紋岩地帯の植物
[T12-2] 早期開花性を獲得した蛇紋岩型アキノキリンソウの集団分化と局所適応
[T12-3] 隔離された蛇紋岩ハビタット間での交流はあったのか?:北海道におけるサクラソウ属近縁2種の研究例
[T12-4] サワシロギクにおける生態型集団の遺伝的および生態的分化 ―湿地から蛇紋岩への挑戦―
[T12-5] ミヤマヨメナにおける矮性型の進化と土壌適応に関する遺伝子発現解析