| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


企画集会 T14-1  (Lecture in Workshop)

性と個体群と群集:環境と相互作用種の移行期における生物の動態と進化

*津田みどり(九州大学)

環境変化下で生物がどのような可塑的反応や適応をし、それが個体群や群集レベルへどう影響するのか。また、そのような反応によって形質間トレードオフや性的対立は解消されるのか、または強化されるのか。これらを、マメゾウムシ亜科昆虫を材料にした実験生態系において検証し、またレビューを介して概観する。地球上で現に進行している大気環境変化を想定し、高CO2濃度または高CO2濃度・高温環境で、マメゾウムシの個体数変動を10-12世代追跡した。コントロール環境においた場合と比較すると、個体レベルでは様々な生活史形質(産卵数、卵サイズ、生存率、発育期間、等)、個体群レベルでは個体数や性比に差が認められた。また、数世代の短期的変化と10数世代に渡る長期的変化は異なる傾向があった。これらは、変化後の環境下で、雌親による子への投資が変化したり、雌雄間で自然選択が非対称的に働き、適応進化を加速させたためと考えられる。
 新生物が群集に導入・侵入した場合、それらの在来群集への影響は無視できないことが注目されてきた。反対に、在来生物はそれらに対して可塑的に反応するのだろうか。またそのとき、群集全体への影響はどのようなものか。新たに導入した寄生蜂による、在来寄生蜂の種内干渉行動の変化とその群集レベルの動態への影響を解明したので紹介したい。さらに、時間が許せば、植食性昆虫における新しい植物へ転換時の網羅的遺伝子発現解析についても紹介する。


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