| 要旨トップ | ESJ64 企画集会 一覧 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


企画集会 T16  3月18日 9:30-11:30 J会場

自然史研究のデータマイニングで生態学にせまる

井坂友一(北海道大学・FSC)・田中崇行(大町岳陽高校)

 近年,地球上の生物多様性ホットスポットと環境要因の関係や,植生分布の変遷,植食性昆虫の各分類群とそれらが資源とする植物分類群の関係などの,生物–非生物,生物–生物の関係の全体像を,ビッグデータの解析により俯瞰する多くの研究が報告されている.このような研究が増加した背景のひとつに,ウェブ上で様々な地域の生物や分類群ごとのデータベースが構築・公開され,我々がそれらをオープンソースとして以前よりも活用しやすい環境が整ったということがあげられる.複数の研究結果やデータベースから狙いとする情報を抽出し,統合・解析することは,ひとつひとつの研究や情報では発見できない全体のパタンとその要因を明らかにすることを可能とした.生態学の分野においてこのようなデータマイニングと統合情報の解析は,データベース上の軽視されがちな基礎的で記載的な自然史研究(例えば分布報告など)を,我々が生物多様性の起源と維持の理解や,保全,また分類群特異的な進化の変遷などを考える際の重要な情報源として活用できるようにしうる.
 これまでの自然史研究に基づくデータマイニング研究の傾向は,全球規模の生物多様性や,生物分類群全体(例えば目レベル)の餌資源など,大きな枠組みで捉えるような内容,つまりマクロスケール・低解像度での評価が主流であったが,最近では地域群集や分類群の科レベルなどのように,より焦点を絞った情報ソースと枠組みに着目し,より緻密なパタンとその要因の解明をねらいとした,ローカルスケール・高解像度での評価が注目されている.本集会では,高解像度評価を目指したデータマイニング研究の事例紹介を通して,自然史研究の重要性と,将来的にデータマイニング研究がどのように展開していくかその可能性を議論したい.

コメンテーター:久保田康裕(琉球大学)

[T16-1] 科/亜科レベルの食草嗜好性から広腰亜目の種多様化の要因をさぐる 井坂友一(北海道大学・FSC)

[T16-2] 標本情報に基づいた標高に沿った植物多様性と外来植物の分布変遷 田中崇行(大町岳陽高校)

[T16-3] 東南アジア海域における生物学的生態学的に重要な海域の推定 須藤健二(北海道大学・環境科学院)


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