| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) A02-07  (Oral presentation)

モンゴル西部山岳地帯に生息するユキヒョウの集団遺伝構造

*杉本太郎(鳥取大学), Chimeddorj Buyanaa(WWFモンゴル), Sergelen Erdenebaatar(WWFモンゴル), 伊藤健彦(鳥取大学), Ochirjav Munkhtogtokh(WWFモンゴル)

ユキヒョウは、中央アジア12カ国の山岳地帯に4500~7500頭が生息するとされ、絶滅が危惧されている。モンゴルには中国に続き世界で2番目に多くのユキヒョウが生息している。特にモンゴル西部の山岳地帯は、ロシアと中国の個体群をつなぐ重要な生息地だと考えられる。WWF(世界自然保護基金)モンゴルによる西部山岳地帯の最新の調査では、8つの地域で生息が確認されているが、生息数や集団遺伝構造などの詳細は不明である。地域集団間の連結性を確保するためには、各地域の生息数や遺伝的多様性、地域間の遺伝的な連結性、そして地形や人間活動などの環境要因がユキヒョウの移動分散に与える影響の解明が不可欠である。モンゴル西部におけるユキヒョウ地域集団間の連結性の確保を目指した保全対策の提言を最終目標とし、糞を用いた生息数推定および遺伝構造解析を行った。糞の表面には腸管上皮細胞が付着しており、遺伝解析によって様々な生態学的・遺伝学的データを得ることが可能である。糞からDNAを抽出し、8つのマイクロサテライトマーカーを用いて個体識別を実施した。採集した試料の7割以上で個体識別に成功し、乾燥および低温の環境により糞の質は高いと考えられる。また中程度の遺伝的多様性を保持していることが分かった。現在解析を進めている生息数推定や遺伝構造解析の結果についても報告する。


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