| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(口頭発表) A02-08 (Oral presentation)
近年、ニホンジカ(Cervus nippon)の分布は拡大し、増加した個体群は森林植生に対して大きな影響を及ぼしている。個体群の管理を行い森林の更新を図っていくためには、ニホンジカの生息密度低下後の稚樹の反応を明らかにする必要がある。我々は、阿寒摩周国立公園の冷温帯針広混交林に1995年に設置した柵内外の調査区において、ニホンジカ密度低下後(2009~2011年8月)の糞粒密度、クマイザサ(Sasa senanensis)被度、光量子密度、樹高及び樹種が稚樹の生存率及び成長に及ぼす影響を評価した。稚樹の摂食確率は、糞粒密度の高い森林で大きかった。糞粒密度が増加するとクマイザサ被度は有意に低下した。稚樹の生存率は、摂食とクマイザサ被度に負の影響を受け、樹種により異なった。稚樹の成長は摂食により負の影響を受けた。我々の研究は、稚樹の生存に対し、ニホンジカの摂食による直接的な負の効果とクマイザサ被度の低下による間接的な正の効果を示した。糞粒密度が2.0粒/m2以下の場合、予測された稚樹生存率は0.65-0.85であった。これらの結果から、管理者は、現状と同程度あるいはより低密度にニホンジカ個体群を維持し、摂食の強度と森林植生の変化を長期間モニタリングすべきであると示唆された。