| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) A02-10  (Oral presentation)

干潟ベントス群集の津波撹乱に対する応答:干潟間で回復状況はなぜ違うのか?

*柚原剛(東北大・院・生命), 鈴木孝男(みちのくベントス研), 占部城太郎(東北大・院・生命)

  仙台湾沿岸には多くの干潟が存在し,それぞれ特有の生物群集を形成している.それらの干潟生態系の生物群集は,2011年3月に発生した東日本大震災とそれに伴う津波により撹乱を受けた.その撹乱の程度は干潟により異なり,浸水高が高かった干潟ほど震災直後のベントス出現タクサ数は減少し,震災前後での群集構造は大きく変化した.本発表では津波による撹乱被害を受けたこれら干潟について、その生物群集が震災後7年間でどのような変化が生じているのかについて検討する。
  調査は宮城県塩竈市の桂島,利府町の櫃ヶ浦,松島町の双観山,仙台市の蒲生干潟,亘理町の鳥の海,福島県相馬市の松川浦鵜の尾の6カ所で行った.各干潟について震災前と震災が発生した2011年,その後2012年から2017年の計8回のセンサス調査を行い,出現タクサ数を調べた.
  各干潟の平均出現タクサ数は,震災直後の2011年には大幅に減少したが,震災後1~2年間で出現タクサ数は増加し,2013年に震災前より増加し最大値を示した.翌2014年に出現タクサ数は減少し,震災前のタクサ数とほぼ同数となった.その後出現タクサ数は2017年にかけて2014年の水準で維持されている.仙台湾沿岸でのベントスの出現タクサ数の経年変化をまとめると,ベントス群集は順調に回復し,その状態が維持されていた.しかし,出現タクサ数は干潟間で差があり,桂島,鵜の尾では震災前より大幅に増加していたが,蒲生干潟では2014年に震災前のタクサ数より減少して以降,タクサ数が少ない状態が継続している.これら出現タクサ数や種組成および各干潟での各種出現パターンから,干潟における生物群集の構造決定機構の特徴と震災後の変動・回復過程について議論する.


日本生態学会