| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) D02-01  (Oral presentation)

木本は草本よりも同調し短く咲く 〜系統樹に基づく開花フェノロジーの種間比較〜

*永濱藍(九大・シス生), 矢原徹一(九大・理)

動物媒植物において、開花フェノロジーは種により大きく異なる。このような種差を進化させた要因として、ポリネータを誘引する方法(ポリネータ仮説)、より確実な送粉を必要とするかどうか(受粉保証仮説)、生育環境における資源利用度(資源利用仮説)の3つの違いが考えられてきた。本研究は、これら3つの仮説のうちどれが最も有力かを調べるため、虫媒の木本・多年草・一年草の48種における開花フェノロジーを九州大学伊都キャンパス生物多様性保全ゾーンにて2016-2017年の3-7月に記録した。この記録から、全開花期間、個体の平均開花期間、その分散、同調性などを比較した。比較にあたり、各種の観察個体数の違いを補正し、系統シグナルの有無を考慮した。その結果、全開花期間は木本(9-50日)が多年草(27-113日)・一年草(22-89日)より有意に短いが、個体の平均開花期間には生活型間で有意差がなかった。木本の方が、多年草・一年草よりも開花期間の分散が小さく、個体間の同調性が強かった。これらの結果は、受粉保証仮説とポリネータ仮説を支持せず、資源利用仮説と整合的であった。木本は、資源利用度がある閾値をこえた個体だけが開花するため、開花数・開花期間の個体差は小さいと考えられる。一方で、多年草と一年草は生育環境の違いに応じて資源利用度の個体差が大きく、結果として開花数・開花期間の個体差が大きいと考えられる。一方、種間の同調性は、木本、多年草、一年草の順に低かった。この結果は、ジェネラリストに送粉される木本種では、繁殖干渉を避けるため種間の開花期がずれ、自家受粉を行う一年草では、資源の利用度が高い時期に多くの種が同調して開花するという仮説で説明できる。本研究から、開花期間の種内同調性と種間同調性は生活型間で異なる傾向を示し、前者には資源利用度の違いが、後者にはポリネータ依存度の違いが影響していることが示唆された。


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