| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) D02-03  (Oral presentation)

ササが枯れると本当にブナは更新できるのだろうか・・・ササ枯死後21年間のブナ稚樹の動態

*蒔田明史, 宮島誠志郎, 高木豊大, 佐藤朋華, 松尾歩, 阿部みどり, 星崎和彦(秋田県立大・生物資源)

 ササの一斉開花枯死はササ型林床をもつブナ林の更新動態に大きな影響を与える。ササが枯れると多くの樹木実生が定着することはよく知られているが,その一方,一斉枯死後にはササ実生も定着・成長するため、林床環境はドラスティックに変化していく。定着した樹木実生はこうした環境変化のもとで成長し,ササを超えなければ最終的に更新木とはなり得ない。一斉枯死したササが回復するには20年以上を要するとされているが,こうした長期にわたりササと樹木稚樹の動態を明らかにした研究例は乏しい。
 本研究は,1995年に林床のチシマザサが一斉開花枯死した十和田湖南岸域のブナ林を対象として,ササ枯死後21年を経たササ実生由来個体群とブナ稚樹集団の更新実態を明らかにし、ササが枯れると本当にブナは更新できるのかを検証しようとするものである。調査はササ枯死直後に設置された1haの継続調査地内の10x10mの稚樹調査区計12区で行った。調査区は,林冠状態(閉鎖林冠vsギャップ)とササの状態(非開花,開花,及び4-8年遅れて開花した場所)を組み合わせて設置されている。そこで,1)ササは開花前の状態に復しているか,2)ブナの稚樹バンクは形成されているか。3)ブナ稚樹はササの群落高を超えているか。4)ブナ稚樹はどのような光環境のもとで生育し,どの程度の主幹伸長量を示しているか等を調べた。
 その結果,枯死後21年を経て,ササの群落高はほぼ開花前に復しているものの,群落構造は完全には元に戻っていないこと,ブナは高密度の稚樹バンクを形成しているものの,ほとんどがササよりも低かったこと,ただし,ギャップでは年間10cm以上の主幹伸長を示す個体も多く、閉鎖林冠下でも最大9.8cm/年の主幹伸長を示す個体が認められたこと等が明らかになった。これらをもとに,ササ群落内の垂直方向の光条件の変化を考慮しながら,ブナの更新可能性について議論する。


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