| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) D02-04  (Oral presentation)

ボルネオ島におけるポドゾル化の程度が異なる熱帯林の個体群動態の比較

*宮本和樹(森林総合研究所), 相場慎一郎(鹿児島大学), 和頴朗太(農業環境変動研究セ), Reuben Nilus(サバ森林研究センター)

気候変動に起因する極端な少雨・乾燥により熱帯林樹木の枯死は今後増加することが予測されている。しかし、こうした乾燥イベントに対する樹木の応答が、標高や森林タイプの違いによってどのように異なるのかは明らかにされていない。発表者らは、2014年~2016年にかけて発生したエルニーニョにともなう少雨・乾燥が熱帯林樹木の個体群動態に及ぼす影響を明らかにするため、マレーシア(ボルネオ島)・サバ州に設置した固定プロットにおいてエルニーニョ発生前後の樹木の成長や枯死の状況を評価することを目的とした研究を進めている。本発表では、エルニーニョ発生前から発生中に相当する2013年~2015年における森林タイプ毎の樹木の成長や死亡に関する傾向を報告する。調査地はサバ州のNabawan(低標高サイト、標高約500 m)とMaliau Basin森林保護区(高標高サイト、標高1000 m)の2ヵ所である。低標高サイトにはヒース林(Large crownタイプ[LC]およびSmall crown[SC]タイプ)および混交フタバガキ林(MDF)、高標高サイトにはヒース林(SH)において調査プロット(50 m x 50 m)が設置されている。このうちヒース林はポドゾルとよばれる貧栄養環境下にみられる森林タイプである。これらのプロット間で比較が可能な樹木の年平均胸高直径成長速度と死亡率について解析を行ったところ、直径成長速度では異なるサイズクラスで森林タイプ間に有意差がみられた。低標高ヒース林、特にLCで直径成長速度が高かった。死亡率はLC > SC > MDF > SH の順に高く、死亡率においても低標高ヒース林で高い傾向がみられた。低標高ヒース林(LC, SC)はMDFやSHと比べて、成長と死亡が共に活発であることが示された。


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