| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(口頭発表) D02-06 (Oral presentation)
植物の植食者に対する防御形質には遺伝的多型が見られる。消費者の採餌行動が防御多型の維持機構になることは理論や実験から示されているものの、こうした行動が個体群レベルで多型の維持に寄与するかを野外で検証した例は限られている。本研究では、理論モデルと実データを組み合わせることで、アブラナ科狭食性のダイコンサルハムシ(Phaedon brassicae)の餌選択行動がハクサンハタザオ(Arabidopsis halleri subsp. gemmifera)の有毛型と無毛型の共存に寄与するかを検証した。まず、植食者の不完全な応答を考慮した最適餌選択モデルを構築し、室内実験のデータを用いてハムシの行動パラメータを推定した。推定された行動パラメータによって、有毛型が少数派のときに食害されにくいという野外の食害パターンを再現することができた。次に、行動パラメータに基づいて野外の有毛・無毛型数の時間変化を説明するために、植物の空間構造を考慮した個体群動態モデルを構築し、マルコフ連鎖モンテカルロ法によるモデルのパラメータ推定を行った。モデル選択の結果、ハムシ最適餌選択を考慮することで動態をより良く説明できることが明らかとなった。さらに、推定パラメータを用いたモデル解析から、ハムシの最適採餌が負の頻度依存選択をもたらすこと、食害圧や防御のコストが変動しても比較的広い条件で有毛・無毛型が共存可能であることが示唆された。