| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(口頭発表) I02-03 (Oral presentation)
組織が柔らかく防御形質も未発達である発芽直後の芽生えは、地表を徘徊する植食者にとって格好の捕食対象であるにもかかわらず、発芽時の実生がどのように被食を免れているのかについてはほとんど着目されてこなかった。近年我々は、オオバコ(Plantago asiatica)の種子がオカダンゴムシ(Armadillidium vulgare;以下ダンゴムシ)とワラジムシ(Porcellio scaber)の排泄物などの痕跡から同種の被食状況を識別し、これら植食者の排泄物が存在する条件下では発芽せず、休眠することを報告した。異なるオオバコの個体群において、種子が晒される被食リスクを調査したところ、ダンゴムシやワラジムシなどの植食者密度に伴って異なることが明らかになった。植食者の排泄物に対する発芽応答は、植食者密度が高い環境条件の集団においてより顕著であると予測される。そこで、ダンゴムシやワラジムシに対する各個体群由来のオオバコの種子の発芽応答を調べた。植食者密度が高い集団から採集された種子は、植食者の排泄物に対して顕著な発芽遅延を示した。一方で、植食者密度が低い集団から採集された種子では、その応答が弱かった。以上の結果は、オオバコの種子が、個体群が晒される被食リスクに応じて、捕食回避としての発芽遅延能力を発達させていることを示唆している。