| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(口頭発表) I02-05 (Oral presentation)
【背景】タンニンは,木本植物の80%以上に存在するとされる最も一般的な被食防御物質である.そのため,多くの植食者は,程度の差はあれタンニンに対する耐性を有している.ある動物にとって実際にどの植物種が重要なタンニンソースであるかを明らかにすることは,タンニン耐性を獲得する過程を明らかにし,その動物の植食適応を理解する上で重要である.本研究では,アカネズミとヒメネズミを対象に,彼らが摂取するタンニンの由来を明らかにすることを試みた.この二種は,日本の森林に広く同所的に生息し,生態も類似しているが,タンニン耐性に明瞭な違いが存在することが近年明らかにされている(Onodera et al. 2017, Population Ecology).【方法】北海道大学雨龍研究林内で2014年6月から10月にかけて捕獲されたアカネズミ49個体,ヒメネズミ43個体の糞を解析に用いた.まず,糞中プロリン法(Shimada et al. 2011, J. Chemical Ecology)によって,糞に含まれるプロリン含有率からタンニン摂取量を推定した.つぎに,同じサンプルを用いて糞中DNAから葉緑体trnL p6 loop領域について次世代シーケンサーによって塩基配列を決定し,雨龍研究林内の植物ローカルデータベースと照合することで採食植物を同定した.【結果・考察】アカネズミのタンニン摂取量は秋に増加した.一方,ヒメネズミのタンニン摂取量は,夏に高い傾向が認められたが,年間を通じてアカネズミより低レベルであった.DNAメタバーコーディングによって明らかになった採食植物を説明変数とし,タンニン摂取量を目的変数として解析を行ったところ,アカネズミについては,ミズナラの採餌がタンニン摂取量を増加させることが明らかになった.季節を考慮すると,ミズナラ堅果がアカネズミにとって重要なタンニンソースであると考えられた.一方,ヒメネズミについてはミズナラおよびヤチダモの採餌がタンニン摂取量と関連する傾向があった.