| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-256 (Poster presentation)
日本のチョウノスケソウは,中部山岳から北海道の高山帯に島状に孤立して分布し,一部の地域では準絶滅危惧種または絶滅危惧II類に指定されている.中部山岳のチョウノスケソウ(南限域個体群)は,高緯度北極域の北限個体群に比べて遺伝的多様性が著しく低く(Hiraoら 2017),地球温暖化の影響によって縮小または絶滅することが懸念される.本研究は,本種の南限域個体群について,環境要因の変化に対しどの程度の応答幅をもつかを個葉特性面からアプローチしたものである.演者らはESJ64(2017,東京大会)において,北極域(NA)と南限域の立山(TT)のチョウノスケソウについて,シュート単位で測定した光合成と葉特性の関係について報告した.NA個体群に対しTT個体群では,AmaxとRdは3〜4倍高く,両個体群の葉N(窒素)の差は小さいが光合成の窒素利用効率(PNUE)はTT個体群の方が約2倍高かった(ESJ64,2017).中緯度高山の個体群は高CO2への光合成応答が迅速で,高い光合成活性を反映してPNUEが高いと考えられた.TT個体群について個葉ベースで光合成を測定したところ,シュートベースでの測定と同等の光合成活性が得られた.これらの結果を踏まえ,個葉特性との関係を新たに解析した結果を報告する.