| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-257 (Poster presentation)
琵琶湖淀川水系および三方五湖の固有種であり絶滅危惧種であるハスについて、2011年3月〜2016年11月にかけて生息調査を行った。2014年に発表した175地点に190地点を新たに調査した。本研究では北西岸の調査地を重点的に増やし、ハスの生息が確認できた地点を前報の58から135地点に増やすことができた。また、北西部(北湖)にはハスの生息地点が多数存在することが判明した。説明変数を底質、水路形状、水路の護岸の有無、水路の樹木の有無、ヨシ帯の有無、季節(春、夏、秋)とした一般化線形混合モデル解析を実施した。その結果、ハスの在/不在に正の影響を与える要因として、砂質の湖底の重要性が示され、礫質についても重要であることが新たに示された。これら365地点のうち、332地点についてハスの成魚と未成魚を区別して記録した。成魚と未成魚がいずれも在の地点が17、成魚のみの地点が41、未成魚のみの地点が65、いずれも不在の地点が209であった。成魚と未成魚の在/不在を応答変数行列として、上記の水路形状、水路の護岸の有無、水路の樹木の有無、ヨシ帯の有無を説明変数にPerMANOVA解析を実施したところ、底質と護岸が有意な影響を与えていることが示された。琵琶湖西岸でのハスの在/不在を示した地図に、一般化線形混合モデル解析から得られたハスの生息確率の予測値を、色分けして図示したところ、北湖と南湖における生息地の現状の差が明瞭に示され、本研究で新たに調査した北西部にハスの生息地が多数あり、未検出の調査地点にも生息確率が高い地点が複数あった。一方南湖では生息確率の高い地点が極めて少なく、本研究での検出地点以外でのハスの生息の見込みは少ないことが示された。本研究で得られた砂底、礫底の重要性を踏まえ、北湖に砂浜が相対的に多く残存していることも合わせて考えると、今後の砂浜の維持や河川からの砂の供給の重要性についても注目する必要がある。