| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-258  (Poster presentation)

タケノコカワニナの分布・成長と底質の有機物含有量の関係

*永野昌博(大分大学理工学部), 石川真太郎(大分大学教育学部)

 タケノコカワニナStenomelania rufescensは,河口域に生息する汽水性の巻貝である。このような環境は埋め立てや護岸整備等によって全国的に減少・消失しているため,本種は大分県,福岡県,宮崎県,熊本県,長崎県のレッドデータブックで絶滅危惧ⅠA類に指定されている。タケノコカワニナを絶滅の危機から救うためには,詳細な本種の好適生息環境や減少要因の解明が急務とされている。本研究では,タケノコカワニナの分布・成長と水質と底質の有機物含有量との関係を明らかにすることによって,それを本種の本種の保全対策に活かすことを目的として行った。
 大分川河口域のおける野外調査では,タケノコカワニナの生息密度と水環境(水深,水温,流速,pH,化学的酸素消費量(COD),溶存酸素量(DO),TDS(総溶解不純物濃度),電気伝導率(EC),塩濃度)ならびに底質の有機物含有量との関係を解析した。その結果,本種の生息密度は底質の有機物含有量と最も強い相関があることが分かった。
 室内実験においては,底質の10gに含まれる有機物含有量を少(0.3g),中(0.4g),多(0.6g),特多(1.0g)に変えた4つの処理区を6反復ずつ設け,そこにタケノコカワニナの稚貝を入れ,有機物含有量と本種の成長との関係を調べた。その結果,底質の有機物含有量の多さと本種の成長には有意な相関がみられた。また,「小」から「多」までの成長の差は僅かであったが,「多」と「特多」の成長の差は2倍以上であった。
 これらのことから,本種の減少・絶滅を防ぐためには,底質の有機物量が特に多い環境,つまり,泥が深い環境を保全・創造していくことが最も重要であること考えられる。


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