| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-261  (Poster presentation)

高知県大豊町におけるニホンザルによる農業被害の現状

*中城海咲(高知大学)

日本の中山間地域においては、過疎化が進むとともに、ニホンザルが分布を拡大して農業被害が問題となっている。本研究では、高知県長岡郡大豊町の吉野川と南小川、徳島県との県境に囲まれた地域において、ニホンザルの分布変化と農業被害の状況を調べた。調査地には、東西に四国山地の尾根が走っており、地理的に北斜面と南斜面に分かれている。ニホンザルの目撃と農業被害の情報を集めるため、調査地において質問紙調査と聞き込み調査を行なった。その結果、ニホンザルが目撃された地点は標高800 m以下であった。調査地におけるニホンザルの分布拡大は、目撃された年代情報を基に、尾根を回り込むように北斜面から南斜面に分布を広げていったことが示唆された。地理情報の解析から、高い標高とともに大きな傾斜角度がニホンザルの分布拡大の障壁になっていたと考えられる。ニホンザルの目撃地点は、10年以上前から目撃されている北斜面では民家の中心地と標高差がなかったのに対して、近年目迎され始めた南斜面では民家の中心地よりも標高が高かった。また、北斜面の方が南斜面より獣害対策を施している割合と強度が高かった。現状では、ニホンザルが目撃される頻度が高まると獣害対策を講じていると推察され、獣害対策が後手に回っていることが示唆された。今後は早期対策することや、被害情報を共有することでニホンザルによる農業被害を予防軽減できる可能性がある。


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