| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-263  (Poster presentation)

一般参加型の植生調査による再生湿地のモニタリング

*佐久間智子(西中国自然史研究会), 白川勝信(高原の自然館), 和田秀次(西中国自然史研究会), 大竹邦暁(西中国自然史研究会)

広島県の北西部に位置する広島県山県郡北広島町八幡地区は、周囲を1,000m級の山々に囲まれた標高800m前後の盆地である。年平均気温は10℃前後、年間降水量は2,100mmから2,300mmと、県内でも積雪量の多い地域である。八幡地区には、大小の湿地が点在するが、湿地の面積は過去に比べて減少している。八幡湿原自然再生事業では、過去に失われた湿原(霧ヶ谷湿原)を再生するため、平成19年度から平成21年度にかけて再生工事が実施された。再生工事では、湿原内に広く水が廻るよう中央を流れる三面張り水路の上流部に取水堰や導水路が作られた。事業実施前から、湿原の観察を続けていた認定NPO法人西中国山地自然史研究会では、再生事業の効果を確認し、今後の保全活動を行う基礎資料を得るため、再生工事後に一般参加者と植物専門講師による再生湿地のモニタリングを開始した。
モニタリングは再生湿地の木道沿いに1m×1mの方形区を12ヶ所設置し、毎年6月と9月に植物社会学的植生調査を行った。方形区は事業地内の植生を代表とする点となるように、立地環境が異なる場所に設置した。得られた資料のうち、2009年から2016年までの9月に行った植生調査資料を用い、湿生植物、乾生植物、外来種の増減を比較した。
調査の結果、エゾシロネ、アブラガヤ、イ、ミゾソバ等の湿生植物の割合が増加した地点と、ヨモギ、ススキ、ミツバツチグリ、スイカズラ等の乾生植物の割合が増加した地点が確認された。外来種については、再生工事後一時的にフランスギクやアメリカセンダングサ等が増加した地点があったが、その割合は次第に減少した。
各地点の結果を再生事業地全域に展開して考えると、工事のねらい通りに水が十分に供給されている場所では、湿生植物が生育するようになったが、そうではない場所では、乾生植物が生育する状態が維持されていると考えられた。


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