| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-266  (Poster presentation)

日本の気候変動適応に向けたVelocity of climate changeの解析

*高野(竹中)宏平(長野県環境保全研究所), 中尾勝洋(森林総研・関西), 尾関雅章(森林総研), 堀田昌伸(長野県環境保全研究所), 須賀丈(長野県環境保全研究所), 松井哲哉(長野県環境保全研究所)

生態系への気候変動影響評価では、bioclimate envelope models(あるいは種分布モデリング)が良く使われているが、個別の種の影響評価を統合的な適応策にどのように繋げていくかが課題になっている。より一般的な指標を用いる事ができれば、地域の生態系全体としての保全を検討したり、脆弱性を比較したりすることがしやすくなる。今回我々は、Velocity of Climate Change (以下、VoCC; Hamann et al. 2015, Global Change Biology 21:997–1004を参照)を指標として解析を行った。VoCCとは、気候が空間的に変化(例えば年平均気温15–16℃の温度帯が100 km北上)した際にその距離を、変化に掛かった時間で割ったもの(例えば100km/100年=1km/年)であり、一定の気候条件を維持するために生物が移動していかなければならないスピードと考えることができる。本研究では、農研機構から提供された国土数値情報3次メッシュ(1km相当)解像度の気候値を用いてVoCCを計算した。具体的には、現在気候の観測値(1981–2010年の期間平均)と将来気候の予測値(IPCC (2013)の温室効果ガスの代表的濃度経路シナリオ(RCP2.6と4.5、8.5の3通り)で2076–2100年の期間平均)を1℃刻みの温度帯に区切り、日本全国の3次メッシュを総当たりで比較することでVoCCを計算した。その結果、VoCCは21世紀末までの平均で10^1.1~10^3.5 m/年にのぼると試算された。本発表では、このVoCCを市町村別に集計した結果について報告し、地域の気候変動適応策策定にどう繋げていくかについて議論する。


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