| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-274  (Poster presentation)

2017年台風21号による出水とカワラノギク

*倉本宣(明大・農), 岡田久子(明大・農), 野村亮(自然環境アカデミー), 伊東静一(明大・農)

礫河原生態系においては、出水による植生の破壊とそれに起因する植生遷移が重要な環境である。出水の原因としては台風が大きな割合を占めている。台風21号は2017年10月16日に発生し、上陸時の台風の大きさのデータがある1991年以降では初めて超大型にまで強風域を拡げた状態で日本に上陸した。また、上陸したのは10月23日で、史上3番目に遅い上陸となった。台風21号に伴う出水は、私たちの観察によれば数年に1度の規模のものであった。カワラノギクが生育している鬼怒川水系、多摩川水系、相模川水系では、鬼怒川水系、多摩川水系では高水敷の植生の変化は小さく、カワラノギク個体群に対する影響は小さかったものの、相模川水系では高水敷の植生が流失した箇所が多く、カワラノギク個体群に対する影響が大きかった。鬼怒川水系では5箇所のカワラノギクの再生個体群はどれも影響を受けていなかった。多摩川水系では、1箇所の野生個体群と5箇所の再生個体群のうち、1箇所が小さな影響を受けた。相模川水系では5箇所の再生個体群のうち、1箇所は大きな影響を受け、2箇所は小さな影響を受けた。
2007年7月の台風4号と梅雨前線に伴う出水の際には、カワラバッタが一時的に下流においても観察されるなど、出水に伴う生物の移動が観察された。台風21号は季節が遅かったため生活史の関係から今のところ生物の移動は観察されていない。2018年春からの調査によって生物の移動をはじめとする遅い時期の出水の礫河原生態系に対する影響について明らかにしていきたい。


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