| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-277 (Poster presentation)
長期にわたって伐採を免れ大径木が残存する森林域は、樹洞などの多様なマイクロハビタットが存在し老齢林に特有なフロラが保たれている可能性が高く、生物多様性保全上の重要性が高い。そのような森林域は、空中写真を用いた樹冠サイズの地図化によって見出すことができる。リモートセンシングによる既往の樹冠サイズ推定手法は、樹冠形状が比較的均一な針葉樹林や地形の平坦な森林域にのみ有効な適用が限られ、地形の急峻な広葉樹林でも適用可能な手法の開発が課題となっている。本研究では、世界自然遺産への登録を目指している鹿児島県奄美大島の亜熱帯照葉樹林をモデルとして、傾斜地の広葉樹林に適用可能な樹冠サイズ推定手法を検討した。
適切な空間スケール(本研究例では12m)における代表的な樹冠の大きさを示す「樹冠サイズ指数」を空中写真(本研究例では1/20,000、BGRカラー、ピクセルサイズ:0.40 m)のband 2(緑)の輝度値を相対輝度値に変換したうえで、粒度分析の手法を用いて算出するという手法である。対象とした森林域の「指数」は、現地踏査により取得した林冠木の平均胸高直径と有意な正の相関(R2 = 0.67)を示した。空中写真のリサンプリングにより生成したピクセルサイズ0.60 m、0.80 m、1.20 mいずれの画像を用いて算出した樹冠サイズ指数も、林冠木の平均胸高直径と比較的高い正の相関(R2 ≧ 0.55)を示した。以上の結果により、本研究で開発した手法による高解像度リモートセンシング画像から算出する樹冠サイズ指数は、傾斜地の広葉樹林における生物多様性指標として有効であり、コスト面からみても利用可能性が高いことが示唆された。