| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-278  (Poster presentation)

カエル後期発生過程における水田農薬の毒性影響について

*坂雅宏, 多田哲子(京都府保健環境研究所)

広域的なカエル類の減少の原因の一つとして考えられている農薬の影響について、その基礎的データを得るため、室内暴露実験により個体レベルで発現する毒性影響を観察した。カエル類の幼生にとって主要な生息環境である水田において、使用量の多い農薬の中からカーバメート系、トリアジン系、酸アミド系の除草剤と、ネオニコチノイド系の殺虫剤を選び、これらを試験物質とした。実験動物としての利便性を優先し、試験生物種としてネッタイツメガエルの前変態期の幼生を使用した。まず、96時間の急性毒性試験を行い、各農薬についての半数致死濃度を算出した。次に、得られた半数致死濃度よりも1~2桁低い濃度で28日間の長期暴露実験(前変態期から変態最盛期直前まで)を行い、形態的計測値と発生段階を記録するとともに、奇形等の異常発生についても観察し、対照実験での結果と比較することにより、幼生の後期発生過程における影響の有無を確認した。急性毒性試験の結果、これらの農薬のカエル幼生に対する半数致死濃度は魚毒性と概ね対応しており、毒性が最も強いものはカーバメート系除草剤であり、ネオニコチノイド系殺虫剤は極めて弱い毒性であることが示された。また、長期暴露実験の結果では、トリアジン系除草剤に成長・発生を阻害し、脊椎異常の発生率を有意に増加させる作用が認められた。室内暴露実験により確認された後期発生過程での異常は、田面水で検出される最高濃度レベルとほぼ同一の濃度で起こっていることから、一部の農薬については、当該の農薬が使用されている水田地帯でのカエル類の個体群動態の調査や、屋外暴露実験等による検証の必要性が示唆された。


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