| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-279  (Poster presentation)

イノシシ体内に含まれる放射性セシウムについて

*大町仁志, 根本唯, 斎藤梨絵(福島県)

 福島県に生息する多くの野生のイノシシから、一般食品の基準値である100Bq/kg以上の放射性セシウムが検出されたことにより、2011年11月から県内で捕獲されたイノシシの肉には、出荷制限及び摂取制限がかかり、現在も継続している。放射性セシウムの蓄積によるイノシシの内部被ばくの影響評価や資源としての利活用を考える際には、イノシシ体内に含まれる放射性セシウムの評価が必要になる。一般的に野生動物の放射性核種濃度モニタリングは後肢の筋肉を用いて行われており、イノシシ1頭に含まれる放射性セシウム量を簡便に試算するには、筋肉中の放射性セシウム濃度にイノシシの重量をかける方法が考えられる。しかしながら、放射性セシウム濃度は体内の部位により異なるとの報告があり、この試算方法ではイノシシに含まれる放射性セシウムの含量を正しく評価できていない可能性がある。そこで本研究では、イノシシ1頭に含まれる放射性セシウム量の推定方法について検討した。本研究では、まず、同じ個体の心臓、肺、肝臓、腎臓、皮膚(体毛)、肋骨などの臓器等に含まれるセシウム-137(以下「137-Cs」)濃度と筋肉中に含まれる137-Cs濃度を比較した。17体のイノシシについて調べた結果、全個体の平均値及びほとんどの個体で筋肉中の137-Cs濃度が最も高かったが、一部では心臓や腎臓など他の臓器の方が高濃度の個体が確認されたことから、筋肉中の137-Cs濃度からの推定は、イノシシ1頭に含まれるセシウム含量の最大値を試算できる有効な方法ではあるが、個体差を考慮する必要があることが明らかとなった。また、既存のイノシシ専用焼却炉を使用し、イノシシ1頭を焼却した際に発生する飛灰及び主灰の137-Cs濃度と回収量から、イノシシ1頭に含まれる放射性セシウム量を試算することが可能か検討したので、その結果を併せて報告する。


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