| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-287  (Poster presentation)

秋吉台上草地における採草パターンが草原生植物の開花に及ぼす影響

*太田陽子(緑と水の連絡会議)

山口県中央部のカルスト台地・秋吉台では,毎年の山焼きにより広大な草原が維持されている.草原内には多数の絶滅危惧植物が生育するが,近年の採草利用の衰退により生育環境の悪化が懸念されている.そこで本研究では,従来この地域で行われてきた夏季の採草が絶滅危惧植物を含む草原生植物の開花に与える影響を調べるため,採草パターンの違う刈取り地において秋季に再生する種について開花数や植被率を比較した.
調査地は毎年採草する区域,3年に1回採草する区域,1回採草してその後放置する区域,採草しない区域の4つの採草パターンに分類された.採草はいずれも7月に行った.それぞれの区域に2m×2mの方形区を複数設置し,2008年から2017年の9月と10月に,イネ科とキク科の一部を除いた種の開花茎数の計測と植生調査をおこなった.
その結果,毎年採草する区域ではセンブリやスミレなどの短茎種の開花数が増加し,3年に1回採草する区域ではシラヤマギクやサイヨウシャジンなどの高茎種の開花数が増加した.1回採草してその後放置する区域では放置からの年数が経つにつれ高茎種の開花数は減少した.これらのことから,草原生植物の開花数増加には採草は有効であるが,保全対象となる種によって採草パターンを変える必要があることが示唆された.


日本生態学会