| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-289  (Poster presentation)

市民調査で明らかになった日本の里山の生物多様性の10年間の変化~モニタリングサイト1000里地調査の成果と今後に向けて~

*藤田卓(日本自然保護協会), 高川晋一(日本自然保護協会), 後藤なな(日本自然保護協会), 石濱史子(国立環境研究所), 竹中明夫(国立環境研究所), 朱宮丈晴(日本自然保護協会), 最上祥成(生物多様性センター), 川越久史(生物多様性センター)

モニタリングサイト1000里地調査は、急激に変化する里地里山の自然環境をモニタリングすることを目的とした環境省と日本自然保護協会の協同事業である。2005年より徐々に調査を開始し、2008年からは全国の市民に参加を呼びかけ、現在全国193ヶ所のサイトにおいて、1500名以上に及ぶ市民調査員との実施体制を構築し、植物相、鳥類、哺乳類調査等9項目の調査を行っている。
これまでに全国から140万件以上のデータが収集され、里地里山における全国規模での生物多様性に関する量的データが初めて得られた。そのデータからは、在来植物の記録種数やチョウ類の記録個体数などの全国的な減少が示唆され、外来植物の記録種数の増加傾向が示唆された。さらにイタチ、ノウサギなど里山に普通にみられる種の個体数の減少傾向が示唆された。
一方で、140万件以上という膨大なデータの解析体制が不足しており、十分に情報を引出しきれていないことが課題となっている。今後は、得られたデータの成果発信を行うことや、研究者との連携などによって解析体制の拡充を図り、減少している種の特徴や里地里山の環境特性と生物相の関係についての解析、生物相が豊かな場所でみられる指標種の選定等を進め、保全施策への活用や調査に参加する市民への成果還元を行っていきたい。


日本生態学会