| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-293  (Poster presentation)

絶滅危惧植物を含む日本産ハナシノブ属のさく葉標本の収集状況

*横川昌史(大阪自然史博)

 日本産のハナシノブ属 Polemonium のすべて分類群は環境省のレッドデータブックに掲載されており、絶滅の危機にある。ある植物が生育していた証拠として、さく葉標本は重要であり、古いものまで含めた採集状況を概観することで、その生育状況の変化などが見えてくるかもしれない。本研究では、国内の主要な植物標本庫に収蔵されているハナシノブ属の標本の収集状況を明らかにし、現在の生育状況などとの比較を行うことを目的にした。
 北海道大学総合博物館(SAPS)、北海道大学植物園(SAPT)、国立科学博物館(TNS)、東京大学(TI)、京都大学(KYO)、大阪市立自然史博物館(OSA)、兵庫県立人と自然の博物館(HYO)、倉敷市立自然史博物館(KURA)、山口県立山口博物館の植物標本庫において、日本で採集されたハナシノブ属の標本をすべてチェックした。その結果、合計495点の標本を確認することができた。最も収蔵数が多かったのはSAPSの192点で、これにTNSの88点、TIの80点、KYOの59点が続いた。これら495点の中から重複標本を除くと285点であった。年代別に採集点数を比べると、日本産の標本に基づいてハナシノブ属が初めて記載された1913年以降、採集数が増加し、1920年代に採集のピークがあった。戦争が激化する1940年代前後に採集数が減るものの、1960年代から80年代には多くの標本が採られていた。その後、1990年代以降は標本採集数が減っていた。これらの標本の採集地を俯瞰すると、多くの採集地では現在も生育が確認されているが、古い標本の採集地の中には現在の生育が確認できない場所がいくつかあった。このような場所は重点的に調査を行うことで生育状況を明らかにしていく必要があると考えられる。その他、日本産ハナシノブ属の現状や研究上の課題などについて様々な議論できればと考えている。


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