| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-142  (Poster presentation)

カンコノキ絶対送粉共生系において宿主を共有する2送粉者の共生性比較

*古川沙央里, 川北篤(京大・生態研)

 自然界では多種多様な相利共生系が普遍的に存在している。中でも、宿主植物と送粉者の種特異性が高い共生関係は、特に絶対送粉共生系と呼ばれている。一概に絶対送粉共生系といっても、必ずしも植物と送粉者が一種対一種とは限らない。相利共生系の進化を理解するうえで、そうした複雑な共生系での送粉者の共生性を評価し、その種間差に繋がる進化背景を解明することは欠かせない。本研究の目的は、送粉者が複数存在する共生系を用いて、送粉者の共生性を比較・評価し、送粉者の共生性の違いを導く要因を明らかにすることである。
 植物と種子食性の送粉者が互いに強く依存しあう絶対送粉共生系に、コミカンソウ科植物カンコノキ属とハナホソガ属ガ類の関係がある。和歌山から沖縄本島にかけて広く分布するカンコノキと、八重山諸島以南に分布する姉妹種ヒラミカンコノキは、系統的に離れた二種のハナホソガ(Epicephala obovatellaEpicephala corruptrix)に送粉される。共生性の指標として、送粉能力と種子生産への貢献度を調べ、宿主を共有するハナホソガ2種の共生性を比較した。送粉能力は口吻上の毛数とそれに付着した花粉数、授粉産卵行動で評価した。種子生産への貢献度は果実あたりの健全な種子の割合で評価した。また、E. obovatellaに送粉された果実は均一に膨らみ、種子をつけるが、E. corruptrixに送粉された「果実」はいびつな形の虫こぶになり、E. corruptrix幼虫の食性が種子食から虫こぶ食に変化していた。そこで、この食性変化とハナホソガ幼虫の寄生者であるコマユバチ科の寄生蜂との関係の有無について検証した。その結果、E. corruptrixでは、花粉を効率よく運ぶための形質である口吻上の毛が乏しく、未熟なつぼみへの産卵行動が確認された。また、E. corruptrixの分布域の種子生産量は5%であり、これはE. obovatellaの40%に遠く及ばない。したがって、E. obovatellaと比べてE. corruptrixはより寄生的であり、それには寄生者の関与が示唆された。


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