| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-146  (Poster presentation)

ポリネーター種組成の差異がもたらす異型花柱性植物の繁殖成功度の季節変化

*森脇大樹, 亀山慶晃, 武生雅明(東京農業大学)

高山生態系における植物の開花フェノロジーは、消雪時季によって決定される。一方で、その送粉者であるポリネーターの活性は季節の進行と共に変動し、種によってそのパターンは大きく異なる。したがって、高山植物の繁殖成功を考える上で、開花季における各種ポリネーターの活性と、同時に開花する他種との相互作用はきわめて重要である。

長野県北アルプス八方尾根において、雪解け傾度に沿って尾根、斜面、谷に調査区を設置し、異型花柱性植物であるユキワリソウの結実率と花粉制限を算出した。また、ユキワリソウを含めた主要な植物種を対象に、ポリネーターの種組成とその訪花頻度を明らかにした。観察されたポリネーターは採取し、口吻の長さに基づいてユキワリソウに対する適法性を評価した。

開花季の早い尾根のユキワリソウ個体群には、ツツハナバチやナミハナアブといった口吻の長いポリネーターが高頻度で訪花した。同時に開花している植物はキジムシロのみで、そのポリネーターは口吻の短いコハナバチであった。斜面のユキワリソウ個体群はツツジ科植物(ウラジロヨウラク)と同時に開花し、ハナバエやヒラタアブなど小型双翅類の訪花以外観察されなかった。谷のユキワリソウ個体群もツツジ科植物(コメツツジ)と同時に開花したが、小型双翅類だけでなく、口吻の長いナミハナアブも低頻度で観察された。マルハナバチは斜面および谷の開花季に出現し、ツツジ科植物を選好的に訪花した。その結果、ユキワリソウの花粉制限は尾根で最も低く、斜面で高くなった。

以上のことから、季節の進行と共にポリネーターの活性は増加するが、同時に開花する植物種の存在がポリネーターの種組成に季節変化をもたらし、ユキワリソウの繁殖成功を決定していることが示された。


日本生態学会