| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-147 (Poster presentation)
ニジュウヤホシテントウ(以下、テントウ)はナス科スペシャリストの植食性昆虫であり、東南アジアではスズメナスビ(以下、ナス)を主要な寄主の一つとしている。一方、インドネシアを含む東南アジアの複数の地域において、本種が緑肥として導入されたムラサキチョウマメモドキ(以下、マメ)を利用している事が報告されている。インドネシアでは、マメは19世紀にジャワ島に導入されたことから、テントウによるマメ利用が過去200年以内に生じたことは明らかである。ジャワ島における1998年までの断続的な調査では、マメ利用集団は西部と中部のみから記録され、東部には出現しないとされていた。その後、2000年に東部のマメ利用集団が偶然発見された。これらの事実は、ジャワ島東部においては1990年代にはマメの利用が生じていなかったか、ごく低頻度だった事を強く示唆する。
2005年に、ジャワ島東部でマメを利用していた2集団を対象とした一連の室内実験を行った。成虫を用いた摂食試験では、2集団の雌雄ともにナスよりマメに有意な選好性を示した。幼虫にマメまたはナスの葉を与えて飼育した場合、2集団ともマメ上での羽化率は80%以上で、ナス上での値と有意差が無かった。マメ上での成育期間と体サイズに関してはナス上での値より有意に劣っていたものの、成育期間はこれまで調査されてきたテントウ集団で最も短かかった。また、1集団について2003年と2004年に予備的に行なっていた成虫の摂食試験の結果より、マメへの選好性は2004年以降に著しく強くなったことが推察された。
以上より、ジャワ島東部では、テントウのマメへの適応が2000年代初頭に急速に進行したと考えられた。2003~2005年に記録した野外での寄主植物の分布およびテントウによる利用状況とあわせ、局所的な寄主植物の存在量が植食性昆虫の新奇寄主への適応の進行に及ぼす影響を考察する。