| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-150  (Poster presentation)

蜜報酬を伴うキノコバエ媒花における香りの化学組成:5科の植物における共通性の検討

*望月昂, 川北篤(京大生態研)

被子植物の花は、色やかたち、においなど様々な形質において多様化を遂げており、多種多様な花形質は主に送粉者への適応を通じて形作られてきたと考えられている。送粉生態学はハナバチや鳥、スズメガなどの動物に送粉される植物を用いて発展してきたが、近年、これまで光を浴びることのなかったカリバチやハエなどの”マイナー”な送粉者に関する研究から、植物の適応に関する新たな知見が次々と明らかになっている。
 発表者らはこれまでの研究で、日本に生育する5科の特有の花形態を共有する植物が蜜を報酬としたキノコバエ媒の送粉様式を持つことを見出し、キノコバエを送粉者として利用する植物群(ギルド)の中には、送粉シンドロームが存在することを示唆した。これらの植物が持つキノコバエによる花粉運搬に適応した花形態は、キノコバエの送粉者としての重要性を物語っているが、これらの植物はどのようにキノコバエを選択的に誘引するのだろうか、また、花のにおいに共通性はあるのだろうか。これらの疑問に答えるため、本研究では、アオキ(アオキ科)、ニシキギ属複数種(ニシキギ科)、クロクモソウ(ユキノシタ科)、タケシマラン(ユリ科)を対象として花のにおい成分に関する調査を行った。その結果、アオキやニシキギ属、クロクモソウは被子植物の花のにおいとしては非常に稀な物質を主成分として持つことが明らかになった。本発表ではそのデータを紹介し、におい成分の収斂の可能性や、共通した物質がキノコバエの誘引とどのように関係しているかについて議論する。


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