| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-151  (Poster presentation)

ツツジ科小低木(ガンコウラン、クロマメノキ、シラタマノキ、コケモモ)の果実特性 ~形態と栄養成分~

*高橋香織(クマ棚ネットワーク), 甘利大河(長野大環境ツーリズム), 井出萌(長野大環境ツーリズム), 佐伯幸祐(長野大環境ツーリズム), 小出悠太朗(長野大環境ツーリズム), 川本謙伍(長野大環境ツーリズム), 高橋一秋(長野大環境ツーリズム)

ツツジ科小低木の果実は、果実食動物が利用する形態を有している。しかし、その果実特性や利用動物について十分な知見が得られているのは、一部の種に限られている。筆者らが研究を行ってきた浅間山(標高2,568m)では、ツキノワグマがガンコウランの果実を利用することが分かってきた。本研究では、クマが4樹種(ガンコウラン、クロマメノキ、シラタマノキ、コケモモ)のうちガンコウランの果実を選ぶ理由について、仮説を立て、検証した。ツツジ科小低木とクマの間に成り立つ相利共生関係を考えると、クマにとってのベネフィットは“餌となる果肉を得ること”で、コストは“種子を運ぶこと”である。そこで、仮説を“4樹種のうちガンコウランの果実が、最も種子(コスト)が小さく、最も栄養価(ベネフィット)が高いため、クマはガンコウランの果実を選ぶ”とした。
浅間山(軽井沢町長倉山国有林)で分析用の果実を採取した。各樹種30個ずつ、果実・種子の短径・長径、湿重量・乾重量を計測した。果実の栄養成分については、基礎成分(粗たんぱく質・粗脂肪・粗繊維・粗灰分・可溶無窒素物)と特定成分(総アスコルビン酸・糖度・ポリフェノール)を分析した。
種子の湿重量と体積は、4樹種の中でガンコウランが最も高い値を示した。果肉の含水率は樹種によって違いが認められず、果肉率(果実湿重量に占める果肉湿重量の割合)についてはガンコウランが最も低い値を示した。栄養成分については、粗たんぱく質・可溶無窒素物・総アスコルビン酸・糖度の4項目で、ガンコウランの果実が最も低い値を示した。したがって、仮説を支持する結果は得られなかった。


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