| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-155 (Poster presentation)
種子散布は動物が担う重要な生態的機能・生態系サービスのひとつである。動物の体内種子滞留時間(seed retention time; 以後SRTとする)、つまり種子を飲み込んでから排出するまでの時間は、種子散布距離を大きく規定し、種子散布の帰結を考えるうえで決定的なパラメーターである。しかしながら、SRTはさまざまな動物で計測されているものの、これを体サイズなどの動物形質から予測するモデルは未だ得られていない。このことは多様な動物が関わる、群集レベルの種子散布の帰結を予測することの妨げとなっている。
そこで本研究では、世界中で計測されてきた多様な動物の平均SRTデータを収集し、動物分類群ごとの体サイズとSRTのアロメトリー関係を求めた。Web of Scienceなどを用いて文献調査を行い、さまざまな種子散布者の平均SRTと体サイズを抽出した。両変数を対数化したうえで、体サイズによるSRTの回帰を行った。回帰には最小二乗回帰(以下OLS)のほか、動物種の系統関係を考慮した系統一般化最小二乗法(以下PGLS; phylogenetic generalized least squares )を用いた。
文献調査の結果、鳥類55種、哺乳類52種、爬虫類6種、魚類5種、無脊椎動物2種の平均SRTが得られた。アロメトリー式は動物分類群によって大きく異なっていた。OLSでは爬虫類のアロメトリーが最大の切片と最小の傾きを示したのに対し、哺乳類、鳥類はより小さな切片と大きな傾きを示した。一方、鳥類と哺乳類に対して行ったPGLSでは、OLSの結果に比べて切片が大きく、傾きが小さくなった。このように得られた鳥類のアロメトリー式から、現生鳥類と系統的に近い獣脚類恐竜のSRTを推定した。以上の結果について議論する。