| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-156 (Poster presentation)
周囲の局所的な環境の違いは、植物の成長や繁殖だけでなく、植食者に対する防衛方法や植食者の種類・密度に影響を与える。また、植物を利用する植食者は多様であり、植食者の種類によって、食害が植物の適応度に与える影響も変化する。
ミズヒキはタデ科イヌタデ属の多年生草本で、春先の展葉期にドクガの幼虫による被害(面状に葉面積を失う被害)を多く受ける。さらに、初夏になると葉の表面に小さな白色痕が広がる被害が増加する。本研究では、2種類の被害に影響を与える環境要因、および、それぞれの被害とミズヒキの適応度との関係を明らかにすることを目的とした。
まず、ミズヒキの生育地内に、50cm×50cmの方形区を15か所設置し、各方形区の環境要因(開空度と土壌硝酸塩濃度)、および、方形区内に生育するミズヒキの面状被害と白色痕被害の被害率を測定した。その結果、面状被害と環境要因との関連性は認められなかったが、白色痕は、開空度が低く暗い地点あるいは土壌硝酸塩濃度が低く貧栄養な地点で被害が増加した。
また、自然状態で被害を受けた個体、あるいは、展葉初期に人為的にドクガ幼虫による被害を与えた個体で、面状被害と白色痕被害それぞれの被害率と適応度(植物体サイズおよび花序数)との関連性を調べた。その結果、植物体サイズおよび花序数は、人為的にドクガ幼虫の被害を与えた個体では面状被害率との間で有意な負の相関を示したが、自然状態で被害を受けた個体では白色痕被害率との間で有意な負の相関を示した。このことは、ドクガによる被害は、被害が大きくなると、適応度に負の影響を与えることを示唆している。しかし、環境の悪い場所で白色痕被害が増加することを考慮すると、自然状態では、白色痕被害あるいは環境要因による負の効果が適応度により強く影響すると考えられる。