| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-172  (Poster presentation)

MIG-seq法を用いた在来2倍体タンポポの遺伝的集団構造

*満行知花(九大・理), 渡邊幹男(愛教大・自然科学), 陶山佳久(東北大・農)

 日本のタンポポは、現在15種4亜種に分類されている。しかし低地性2倍体タンポポは形態変異が大きく、分布も連続的で分類が難しいため、「全部まとめてニホンタンポポとよぶほかない」という見解もある。これらの種の関係を正確に理解するためには、日本各地の種間・集団間の遺伝的分化を調べる必要がある。また、ゲノムワイドな多型検出によって各種特異的な遺伝子型セットを収集することは、不明種の種同定や、移行帯の集団動態の歴史を推定することにも役立てられる。そこで本研究では、近年開発された次世代シーケンサーを用いた塩基配列多型検出法であるMIG-seq(multiplexed ISSR genotyping by sequencing)法によってゲノム情報を取得し、種間・集団間の遺伝的分化を明らかにした。
 解析に用いた材料は、福岡(カンサイタンポポ)、大阪(カンサイタンポポ)、滋賀(セイタカタンポポ)、静岡(トウカイタンポポ)、神奈川(カントウタンポポ)、栃木(カントウタンポポ)の各地域30個体、計180個体である。得られた1,829座の一塩基多型(SNPs)を用いた主成分分析の結果、各種の明確な分化が検出された。また、カントウタンポポ、カンサイタンポポともに、集団間でも分化が認められた。遺伝的集団構造(STRUCTURE)解析でも同様に、種ごとに異なる遺伝的要素が検出され、今回解析に用いたサンプルの中には種間交雑由来の可能性を示す個体は認められなかった。
 今回の解析では、低地性2倍体タンポポにおける種間・亜種間・集団間での明瞭な遺伝的分化が示され、これらは現在の分類とよく一致していた。また各種の持つ固有の遺伝子型セットも明らかにできたため、今後、移行帯や不明種の同定が期待できるほか、各種・集団の歴史なども推定できるだろう。


日本生態学会