| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-174  (Poster presentation)

スイセンハナアブとマルハナバチ:擬態者とモデルの発生時期の比較

*須島充昭(東大総合文化)

ハナアブ科の昆虫には、ハチに擬態した種やハチと類似した警告色パターンを持つ種が多数知られており、進化が生物同士の関わり合いの中で進行することを示す一例といえる。演者は色彩多型を持ち複数種のマルハナバチに擬態していると考えられている外来種スイセンハナアブ(Merodon equestris)を対象として、日本のマルハナバチ相への適応についての研究を行った。本発表では、スイセンハナアブとマルハナバチ類(Bombus属各種)の発生時期を比較し、どの種類のマルハナバチがモデルとしてより強い選択圧となるかについて推察する。演者はこれまでに4つの調査地点(東京、横浜、埼玉、仙台)でおよそ1000個体のスイセンハナアブを捕獲した。捕獲時期は4月後半から6月前半までの間で、どの地点も5月の捕獲個体数が最も多かった。本種は年一化の昆虫であり、成虫の発生期間は比較的短い。一方調査地で見られるマルハナバチ(多い順にトラマルハナバチ、コマルハナバチ、クロマルハナバチ、オオマルハナバチ)は、種によって個体数の増す時期が異なっていた。コマルハナバチは発生時期が早く、5月と6月に個体数が増した。他の3種は6月から7月にかけて増加する傾向があり、トラマルハナバチは秋まで個体数の多い状態が維持されていた。擬態者にとって、自身より後に発生するモデルよりも、同時期あるいはそれより前に発生するモデルに類似した方が擬態の効果は高まると予想される。したがって発生時期という点からは、コマルハナバチが他種よりも強い選択圧となる可能性が高い。スイセンハナアブの色彩多型を原産地ヨーロッパと侵入地日本の間で比べた場合、日本産ではコマルハナバチと同じ警告色(黒色で腹端のみ黄色)を持つ個体が多く、捕食を回避できた色彩型の割合が増加してきた可能性がある。


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