| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-176  (Poster presentation)

霞ヶ浦流域河川における環境DNAを用いた魚類の種多様性評価

*今藤夏子(国立環境研・生物), 松崎慎一郎(国立環境研・生物), 角谷拓(国立環境研・生物), 山口晴代(国立環境研・生物), 安藤温子(国立環境研・生物), 中嶋信美(国立環境研・生物), 高津文人(国立環境研・地域), 渡邊未来(国立環境研・地域), 小松一弘(国立環境研・地域), 霜鳥孝一(国立環境研・琵琶湖), 中川恵(国立環境研・生物), 伊藤洋(総研大・先導科学), 大澤剛士(農研機構・農環変動セ), 三枝信子(国立環境研・地球), 高村典子(国立環境研・琵琶湖)

 塩基配列に基づいて生物を分類する技術であるDNAバーコーディングを利用した生物調査や研究が広く行われるようになってきた。また、生物から放出されて水中に漂うDNA,すなわち環境DNAの塩基配列を分析し、DNAバーコーディングにより種を同定することで、その水域に生息する生物相を把握するメタバーコーディングも発達し、水生生物の調査・研究のデザインにも大きな影響を与えている。環境DNAによる調査は、現地での作業が採水のみと簡便であるにもかかわらず、検出感度が従来法よりも高いことが報告されており、調査労力や生態系に与えるダメージの削減に加え、調査困難な場所での調査や生息密度の低い希少種等の検出にも対応できるためである。
 我々は、霞ヶ浦(西浦)流域における生態系サービス・生物多様性の評価を進めており、その一環として、環境DNAを用いた魚類の多様性の評価を行ってきた。魚類の多様性調査にあたり、まず全流域を50の小流域に分け、各小流域の最下流部1箇所において3Lずつを採水した。次に、水試料をガラス繊維ろ紙でろ過し、ろ紙から環境DNAを抽出してMiya et al. (2015) に従って魚類のメタバーコーディングを行った。採水は2016年7月(以下、夏)および2017年1月(同、冬)の各2日間に実施し、全流域の合計で夏は53種群、冬は43種群が検出された。なお、解析した12S rRNAの部分塩基配列約180bpを系統解析し、種判別に不十分と判断される場合は、生態情報なども加味して種群としてまとめた。検出された種群中には、アカヒレタビラ等の絶滅危惧種も含まれており、環境DNAの検出力が高いことがうかがわれた。そのほか、各採集地点間の検出種の類似度について解析した結果についても報告する。


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