| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-177  (Poster presentation)

農業水路網での魚類相調査における環境DNA分析の有用性

*丸山敦(龍谷大学), 高田恭輔(龍谷大学), 麻田弥希(龍谷大学), 渡邊和希(龍谷大学), 佐藤博俊(龍谷大学), 米倉竜次(岐阜県水産研究所), 山中裕樹(龍谷大学)

淡水魚の繁殖・成長の場となる農業地域では、定期的、広域的、非破壊的な生物相調査が望まれる。そこで、環境中に放出された種特異的なDNA断片(環境DNA)を種組成の推定に用いる環境DNAメタバーコーディング法を適用し、捕獲調査と比較することで実用性を検証した。また、魚類相の季節変化の把握を試みた。
 岐阜県南部の水田地域で、2015〜16年の8~9月に分布調査のための採水を22水系で、2017年5~11月に季節変化調査のための採水を3水系で行った。計23水路(重複2)の田面、末端水路、幹線水路、河川との合流点に採水地点を設けた。水1Lを濾過し冷凍保存したガラス濾紙から、後日DNAを抽出し、魚類汎用プライマーMiFish-Uを用いてDNAを増幅し、NGSで塩基配列を解読した。捕獲調査は、2017年までの7年間、全採水地点で順次行われた。2017年8・11月は、捕獲が採水直後に行われた。捕獲は、各水路の幅に調整した小型地曳網で水路30mを囲い込む形で行った。外部形態に基づいて種・齢ごとの個体数を記録した。
 NGS解析で6.3百万リードを得た。全23水系で環境DNAと捕獲のどちらかで確認された魚類は計58種に上り、うち環境DNAでの検出は53種(91%)、捕獲では34種(59%)、両手法一致した検出は29種(50%)であった。不一致の要因として、捕獲ミス、PCR増幅効率の種間差、手法間の有効空間スケールの違い、食用魚DNAの混入が考えられた。濾過〜PCRでのコンタミはなかった。水系ごとに検証すると両手法の一致率はさらに下がるが、各種の検出地点数は強く正相関した。各魚種のリード数と捕獲個体数、各地点でのリード数と総捕獲個体数も、緩く正相関した。種数は、各水路の下流側で多かった。魚種の豊富な2水系では、6~7月に環境DNAによる検出種数の増加が見られた。落差工で河川から分断された1地点では、明瞭な種数増加が見られなかった。これらの結果から水田地域の種多様性の維持には、季節移動が可能な構造が望ましいことが効率的に示された。


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