| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-180  (Poster presentation)

植物多様性は分解機能の経時安定性に貢献するか?:内モンゴル・ステップ草原での検証実験

*岡田慶一(横浜国大環境情報), 内田圭(横浜国大環境情報), 佐々木雄大(横浜国大環境情報), 藤井佐織(アムステルダム自由大), Lu, Xiaoming(中国科学院植物研究所), Bai, Yongfei(中国科学院植物研究所), 森章(横浜国大環境情報)

これまでの理論・実証の積み重ねから、気候変動や人為的攪乱に対して、生物多様性が生態系機能の安定性に寄与することが明らかにされてきた。特に経時的な安定性は、主に草原生態系をモデルとして、植物が機能の主体となる一次生産性に関して研究が進められてきた。一方で、他の生態系機能の経時安定性と植物多様性の関係性は未だ実証に乏しい。
リター分解機能は、一次生産された有機物を生態系内で循環させる重要な機能であり、植物群集は様々なプロセスで分解に関与する。植物リターの化学・物理的多様性は、基質として直接分解に影響する他に、分解者群集を規定する要素となっており、間接的にも分解プロセスに関与している。
生物多様性が生態系機能の安定性に寄与し得るプロセスの一つとして、機能的な冗長性が、環境変動に対する種の応答性の多様さを担保することで、安定性に寄与し得ることが提唱されている。本研究では、植物群集の種多様性や機能形質の多様性と、分解機能の経時安定性の関係性を解析した。
調査は降水量変動などの気候変動に脆弱な、中国・内モンゴル自治区シリンゴル盟の草原試験区(6×6m,128区画)で行った。分解機能は、植物群集の間接的な影響に焦点を当てるため、Tea-bagを用いた標準基質による試験を行った(Keuskamp et al. 2013)。植物の生育期にあたる6-9月にかけて試験を実施し、2015-2017年の3年間継続した経時データから分解定数(k)と潜在炭素貯留性(S)の変動係数を算出した。植物群集については、同3年間の各試験区の草本群集データと、主要構成種の葉および根の形質値から、植物群集の機能的多様性を評価した。本発表ではこれら分解機能の経時安定性と植物の機能的多様性との関係性について紹介する。


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