| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-181 (Poster presentation)
湖沼は、近年、環境変化により生態系が大きく変化しつつある。46万年の歴史を有する世界有数の古代湖、琵琶湖においても、近年、赤潮やアオコの発生、新規ウイルスの侵入によるコイの大量死に象徴される変調が報告されている。しかし、近年の環境変化が生物同士のつながり、生物間相互作用にどのような影響を及ぼしてきたのかは、良く判っていない。一方、湖沼では近年、ミジンコの死亡率増加にウイルスが大きく寄与した可能性が見いだされ、しかも30年以上前の湖底泥に含まれるミジンコ休眠卵から感染ウイルスが検出できることが報告された(Hewson et al. 2013)。これは、休眠卵に残るウイルスを検出できれば、過去に遡ってミジンコとウイルスの動態を再現できることを示唆している。そこで本研究は、遺伝子解析技術を古生物学的手法に応用させ、過去100年にわたり、プランクトン対ウイルスの相互作用がどのように変化してきたのかを明らかにすることを目的とし、ミジンコの変遷や休眠卵からのウイルス抽出を試みた。これまでの観察や分析から、興味深いことに2000年頃、突然、琵琶湖に出現したとされる大型種のDaphnia pulicaria(Urabe et al. 2003)が6月に優占的に出現し、8月には従来の優占種である中型種のD. galeataが優占していることが判明した。HotSHOT法 (Ishida et al. 2012)を用いて、表層堆積物に含まる休眠卵からDNAを抽出する遺伝解析を進めた結果、2種が混在していることが判明し、近年これら大型種と中型種が共存するようになったことが示唆された。また休眠卵のサイズと種関係を12s rDNAとミトコンドリアDNAの配列解析により調べた結果、休眠卵はサイズにより上述の大型と中型種が判別できる可能性が高い。現在、ミジンコ個体や休眠卵、堆積物からのウイルス抽出の解析を試みており、堆積物からのウイルス抽出は達成しつつある。本発表ではこれらの結果に基づいて、過去100年間のミジンコ相の変化や生物間相互作用の解析についての試みを紹介する。