| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-183  (Poster presentation)

熱帯林の断片化景観における種多様性とそれに影響を与える要因

*竹内やよい(国立環境研究所), 鮫島弘光(IGES), Bibian Diway(サラワク森林公社)

ボルネオ島の焼畑農耕民社会では、焼畑耕作地の間にプラウ(現地語で「島」の意)と呼ばれる断片化した森を残し、林産物を採集するのに利用してきた。現在、農村部の景観においても低地熱帯林は、ほぼ二次林化しており、原生林の状態に近いのはプラウのみとなっている。個々のプラウがそれぞれの生物多様性を保持するならば、複数のプラウを保護することが、地域的な生物多様性の維持に有効であろう。本研究では、大きさ、孤立度などの属性の異なる複数のプラウを対象とし、プラウの種多様性とそれに影響する要因を明らかにすることを目的とした。本発表では、今まで知見の少ない哺乳類の種多様性について焦点を当て、プラウの保全効果について考察する。
調査は、マレーシア、サラワク州の開発が進む2つの地域、ジェラロンとウルアナップで行った。それぞれの地域には、村々が保有する断片化したプラウが存在し、調査はそれぞれ7、8か所を対象とした。プラウには、樹木の種多様性を評価するための植生調査区が設置されている。その調査区の近辺で2015年2月から2017年9月の間のいずれかに、それぞれの地域で20、23台のカメラトラップを設置して生息する動物種を観察した。結果、各地域において有効なカメラ稼働日数は合計5902、10763日・カメラであり、それぞれ合計28、21種類の哺乳動物(げっ歯類を除く)を観察した。どちらの地域でも、ブタオザル、ヒゲイノシシの個体数が多かったが、森林性の動物(マレーグマ等)も観察された。また、稀ではあるが絶滅が危惧されているボルネオヤマネコ、センザンコウなども観察された。
次に、対象地域のLandsat衛星画像解析から森林率を算出した。各プラウの樹木の種多様性についても考慮し、哺乳類の種多様性に影響する要因を統計解析で明らかにした。発表ではその結果を示し、土地利用が哺乳類の種多様性に与える影響とプラウが哺乳類の種多様性保全に貢献するかについて議論したい。


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