| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-184  (Poster presentation)

環境DNAメタバーコーディングに基づく福岡県今津干潟の魚類相の解明

*會津光博(九州大学), 清野聡子(九州大学), 佐土哲也(千葉県立中央博物館), 宮正樹(千葉県立中央博物館)

今津干潟は福岡県糸島半島東部に位置し、カブトガニTachypleus tridentatusの生息が確認されている数少ない干潟の一つである。しかしながら、魚類相を網羅的に調査した例はなく、現在の魚類相は不明瞭であった。採集や目視等の従来の調査法は時間的・経済的に多大なコストがかかり、種同定には専門的な知識と経験が必要となる。魚類において近年急速に発展してきた環境DNAメタバーコーディングの手法は、上述の問題を乗り越える画期的な手法として注目を浴びている。本手法は、水中に放出された環境DNAを元に、魚類ユニバーサルプライマーを用いたPCR、その後の次世代シークエンサーによる超並列塩基配列決定を行い、数日間で実施することが可能である。そこで、本研究は環境DNAメタバーコーディングを用いることで、今津湾の魚類相を高解像度かつ迅速に把握することを目的とした。
 2017年1月6日、今津干潟周辺の4地点よりバケツを用いて計10Lの採水を行い、ステリベクスHV-フィルター(0.45μm)を用いて吸引濾過を行った。フィルターより全DNAを抽出した後、MiFishを用いたPCRを行い、魚類12S rRNA領域を増幅、MiSeqによる超並列シーケンスを行った。得られた配列情報を処理した後、データベースに基づき各配列の特定を行った。
 解析の結果、31の魚類OTUを検出した。うち、2/3は海水、汽水域に生息する種であり、1/3は淡水性の魚類であった。得られたリード数のうち、約半数はボラMugil cephalusであった。ボラは汽水域には一般的に見られる種である。これらの結果より、干潟の魚類相解明に魚類環境DNAメタバーコーディングが適用可能であることが示唆された。また、淡水魚も多く検出されたが、これは今津干潟に流入する瑞梅寺川からの流入の影響があることが示唆された。定期的な環境DNAによるモニタリングを行うことで、今津湾に生息する魚種の季節変化や、より詳細な生態系情報の収集が可能となる。今後も継続して調査を行う必要性があると考えられる。


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