| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-200 (Poster presentation)
餌生物の異地性流入は、受け手の捕食者の個体群の維持に関わる重要な要因である。特に捕食者の個体群は、餌生物の流入期間が長期間維持されることで、より安定すると考えられている。その仕組みとしては、フェノロジーが異なる餌種によって構成されることで、季節を通して発生パターンが相補的になると考えられるが、検証した研究は限られている。水田は、腐食連鎖由来のハエ目の発生が卓越しており、水田の管理特性の違いによって種組成が異なっている。また、水田で数多く生息するアシナガグモ属の個体数は、ハエ目の数と強く関連を持つことが知られているため、フェノロジーの異なる餌種の組み合わせが、捕食者に及ぼす影響を評価するのに適している。そこで本研究では、ハエ目とアシナガグモ属に着目し、以下の仮説を明らかにした。①アシナガグモ属の個体数は、異なる時期に発生するハエ目のバイオマスから独立に影響を受ける。②アシナガグモ属の個体数に影響するハエ目の群集構造は、時期によって変化する。
調査では、栃木県塩谷町の25水田で、アシナガグモ属の目視による個体数カウントを4回、羽化トラップによるハエ目の採取を6回行った。ハエ目の種組成は、明確に種レベルで分類することが困難だったため、形態的特徴でグルーピングした。解析では、まず複数の時期の餌量がアシナガグモ属の個体数に及ぼす影響を評価するため、パス解析を行った。次に各時期のハエ目の乾燥重量を増加させるグループ組成を明らかにするため、主成分分析で、ハエ目の発生パターン示す軸を構成し、乾燥重量と回帰した。
その結果、以下のことがわかった。①アシナガグモ属の個体数は6時期中、3時期のハエ目の乾燥重量によって増加した。②その3時期のハエ目の群集構造は、それぞれでグループの組成が変化しており、5グループのハエ目が関与していた。