| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-203  (Poster presentation)

熱帯山地林樹木群集組成に対する過去の伐採攪乱および標高の影響

*矢納早紀子, 藤木庄五郎, 青柳亮太, 北山兼弘(京大・農・森林生態)

熱帯林伐採に伴う生物多様性の減少は著しく、適切な生物多様性の評価に基づく熱帯林の保全および管理が急務である。ボルネオ熱帯降雨林では樹木群集組成が熱帯林生態系の原生度(健全性・機能)を鋭敏に反映するため、この指標値を景観レベルに展開することで原生度の広域評価が可能である。このような背景から、衛星画像解析を用いた樹木群集組成の地図化が、簡便かつ広域的な生物多様性評価手法として近年注目を集めている。しかしこの手法は、熱帯低地林にのみ適用されており、植生の異なる標高600 m以上の熱帯山地林に適用可能か否かは確かめられていない。熱帯では低地から高地にかけて伐採が行われており、山地林の生物多様性評価も不可欠である。そこで本研究は、マレーシアの熱帯山地林で衛星画像解析を用いた樹木群集組成の地図化を行い、その精度を検証することを目的とした。対象地はマレーシア・サバ州、トゥルス・マディ山の森林管理区とした。劣化度の異なる森林(標高285–1105 m)に半径20 mの円形プロットを90 個設置し、樹木個体の胸高直径および種名を記録した。植生データを元に多変量解析nMDSを行い、森林の原生度を指標するnMDS1軸値を得た。このnMDS1軸値を目的変数、Landsat衛星画像の分光反射特性とテクスチャを説明変数とし、重回帰により原生度推定モデルを作成した。この推定モデルを管理区全体に外挿することで景観レベルの原生度を推定し、その精度をCross Validation法により確かめた。精度検証の結果(adj.R^2=0.70)より、衛星画像解析を用いた樹木群集組成の地図化手法は、低地と植生の異なる熱帯山地林にも適用可能であることが示された。また、nMDS2軸値と標高が相関していたことから、説明変数に標高データを加えることで、植生への伐採攪乱の影響と標高の影響を分離して評価できる可能性が示唆された。


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