| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-205  (Poster presentation)

雑種体を形成するミドリイシ属サンゴ集団の遺伝的関係

*磯村尚子(沖縄高専), Jean-François Flot(ブリュッセル自由大学), 守田昌哉(琉球大学), 深見裕伸(宮崎大学)

 ミドリイシ属サンゴは、夏季満月付近の夜に同属の種が同調して産卵する。この際、海中に複数の種の配偶子が混在するため種間交配が起こる可能性がある。これまで、サボテンミドリイシAcropora florida、トゲスギミドリイシA. intermediaおよびオヤユビミドリイシA. gemmiferaを対象に、対象種の中間形態を持つ群体を野外で発見したこと、さらに、人工的に作出した雑種体は妊性を持つことを明らかにしたことから、野外において雑種体が新しい種として存続できる可能性があると考えた。そこで本研究では、対象3種と中間形態群体について、1)系統解析、2)ハプロタイプネットワーク解析、3)RADの結果を用いたクラスター解析を行ない、阿嘉島のミドリイシ属集団について遺伝的関係を検証した。
 系統解析から、サボテンミドリイシとトゲスギミドリイシの2つのクレードに分かれることが示された。しかし、自身の種とは異なるクレードに属している群体が少数みられた。ハプロタイプネットワーク解析から、以下の3つのハプロタイプが示された:1)サボテンミドリイシ、トゲスギミドリイシ、オヤユビミドリイシ、中間形態群体が共有、2)トゲスギミドリイシと中間形態が共有、3)サボテンミドリイシ群体間でのみ共有。さらに、クラスター解析からは、以下2つのクラスターが示された:1)トゲスギミドリイシ、オヤユビミドリイシ、中間形態群体が形成、2)サボテンミドリイシ、オヤユビミドリイシ、中間群体が形成。
 以上の結果から、系統的に近い対象3種は遺伝子浸透が生じていると考えられた。また、遺伝子浸透と中間形態群体生成どちらにおいても、オヤユビミドリイシが介在している可能性が高いと考えられた。今後は、サンプル数と対象の領域数を増やし、ミドリイシ集団の詳細な遺伝的関係、特に中間形態群体形成の過程について明らかにしていく予定である。


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