| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-221  (Poster presentation)

カメラトラップと罠捕獲を利用したイノシシの個体数推定法の開発

*笠田実(東京大学), 横溝裕行(国立環境研究所), 中島啓裕(日本大学), 矢島豪太(日本大学), 横山雄一(東京大学), 宮下直(東京大学)

 イノシシによる獣害は、全国で被害が拡大、深刻化しており、積極的な個体数管理が不可欠となっている。その管理のためには、イノシシの生息状況を正確に把握する必要があるが、イノシシは、目視による観測が難しく、痕跡も残りにくいため、小スケールの密度指標データは限られている。これらの現状を受けて、イノシシの新たな密度指標の検討と、個体数推定モデルの開発が必要とされている。
 本研究では、イノシシの個体数推定精度向上のため、罠によるCPUE(努力量あたりの捕獲数)とカメラトラップの二つの密度指標のデータを組み合わせた、新たな個体数推定の手法を提案する。CPUEは千葉県の協力のもと、県の狩猟、および指定管理鳥獣捕獲等事業により得られた捕獲データを用いた。カメラトラップに関しては、県内の11サイトに、各20台のビデオカメラを設置することで、動画による撮影データを取得した。CPUEによるデータは千葉県内の広い範囲で取得されており、経年データも得られるため、広い空間スケール、時間スケールでの密度推定が可能である。しかし、CPUEのデータは、個体数推定を目的として取得されたものではないため、高い解像度での推定精度の確保は困難である。一方で、ビデオカメラを利用したカメラトラップによる密度推定は、小スケールでの正確性は向上するものの、広範囲に渡る大規模なデータ取得には向いていない。本研究で提案するモデルは、一つのシステムモデルと、二つの観察モデルをもつ状態空間モデルであり、捕獲データと動画データという特徴の異なる2種類のデータを同時に扱うことができる。これにより、広範囲、高解像度かつ、より高い精度でのイノシシ個体数推定が可能となる。また、発表では、本モデルの結果から得られる、千葉県のイノシシの行動や生息域の特性についても議論したい。


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