| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-222  (Poster presentation)

大規模風倒かく乱後の風倒木搬出が森林の炭素蓄積に与える長期的影響

*森本淳子(北大院農学研究院), 梅林利弘(北大院農学研究院), 堀田亘(北大農学部), 鈴木智(東大秩父演習林), 尾張敏章(東大北海道演習林), 井上貴央(北大北方生物圏セ), 柴田英昭(北大北方生物圏セ), 渋谷正人(北大院農学研究院), 石橋聰(森林総研北海道支所)

温暖化による台風かく乱の激化が予想される中、従来の「風倒木搬出」が森林生態系に与える長期的影響を踏まえた森林管理が求められている。特に成長・分解速度の緩慢な北方林では重要な課題である。そこで我々は、北海道で発生した洞爺丸台風(1954年)による大規模風倒とその後の倒木除去が、63年後の森林の種組成と炭素蓄積に与える影響を、実測と過去の調査資料との比較から明らかにした。標高の異なる2地域を対象とし、風倒後無施業林分(Control)、風倒後倒木除去林分(Salvage)、台風時非倒壊林分(Reference 1)で、森林を構成する種組成・立木と倒木のサイズ・土壌炭素を調査した。倒壊前林分(Reference 2)については、倒壊直後のControlにおける倒木・生立木を含めた調査から倒壊前の種組成を復元した。以下に、種組成に関する結果と考察を述べる。標高の低い地域(支笏)では、Controlが倒壊前林分(Reference 2)に近い種組成にもどり、Salvageでは倒壊を免れたReference1に似た種組成になった。Controlでは倒壊前から林床に生育していた耐陰性の高い広葉樹や針葉樹の前生樹を主体として再生したのに対し、Salvageは前生樹の破壊により根返りで発生したピット(鉱質土層)を好む、先駆性の広葉樹が侵入し広葉樹の優占する林分への発達を促したとみられる。一方、高標高の地域(大雪)では、Control、Salvageの差はなく、両処理ともに非倒壊・風倒前より広葉樹割合が高くなった。この地域では、かつて林業が盛んで抜き切りが頻繁に行われていたため、風倒発生前から、倒木および倒木上更新個体を含む前生樹が少なく、倒壊後の倒木処理の有無が前生樹の生残量には表れにくかったと予想される。種組成の観点からは、倒壊後のSalvageは将来の種組成を変えること、さらに、倒壊前の施業の強度も種組成に影響を及ぼす可能性が示唆された。


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